観葉植物は本当に空気をきれいにする?事実と誤解、そして選びたい5つの植物
2025年10月11日
室内空気の話題が再燃し、「空気をきれいにする観葉植物」という検索が増え続けています。信頼を得るには正しいストーリーを伝えることが大切です。植物は雰囲気とウェルビーイングを高めてくれますが、換気やフィルターの代わりにはなりません。本記事では最新のエビデンス、伝えるべきメッセージ、そしてブランド価値を高める5つの植物をまとめました。日本でも人は時間の約90 %を屋内で過ごすため、科学的なアドバイスがこれまで以上に重要です。拠り所となるのは EPA(米国環境保護庁)の研究 です。
NASAの研究は何を示していたのか?
1989年、NASAは約1立方メートルの密閉チャンバーに鉢植えと活性炭フィルターを組み合わせて収容し、将来の宇宙居住空間を想定した実験を行いました。この実験では「植物+活性炭」システムが一部の揮発性有機化合物(VOC)を除去できると確認されました。しかし、レポートでは一切「1鉢でリビングの空気を浄化できる」とは述べていません。詳細は オリジナル報告書 に明示されており、その後 Drexel大学のエンジニア が家庭環境に当てはめるのが非現実的であることを算出しました。
「建物の空調システムに匹敵させるには、床1㎡あたり100〜1,000株の植物が必要になる。」— Waring & Cummings, Drexel University (2019)
つまり一般的な部屋で空気清浄効果を生活レベルで得るには何十鉢も要る計算です。American Lung Association も同様に、「観葉植物は素晴らしいが、独立した空気清浄機ではない」と結論づけています。GardenMyths.com ではこの神話がどのように広まったかが詳しく解説されています。
最新研究が推奨する室内空気戦略
実証済みの対策は3本柱です。EPA は、①汚染源の制御、②換気の強化、③残留物質のフィルタリングを推奨。2024年のアップデートでは、天候が許すときは窓を開ける、システムが対応できればMERV-13フィルターへ交換、キッチン・浴室の排気を活用、部屋のサイズに合ったHEPA空気清浄機を追加する、といったポイントが挙げられました。Drexelの研究者 も「植物の浄化速度は標準的な換気に比べれば非常に遅い」と指摘しています。植物は総合プランの“仕上げ”として活躍する存在です。
それでも植物をおすすめする理由
VOC除去は限定的でも、植物がもたらす心理的な恩恵は大きいのが事実です。Texas A&M大学の研究によれば、室内の植物を世話することでストレスが減り、気分が向上するとのこと。研究サマリー で詳細が紹介されています。
空気のために選びたい5つの植物(現実的な期待値で)
以下の5種は空気浄化というキーワードでよく取り上げられる定番です。ここではケアのポイント、ペットへの注意点も併せてまとめています。
スパティフィラム(Peace Lily)

- 人気の理由:艶のある葉と象徴的な白い仏炎苞、そして水切れサインが分かりやすい。
- ケアのコツ:明るい間接光、常に湿り気のある培養土(過湿はNG)、月1回の葉拭き。詳細は Clemson Cooperative Extension。
- ペット注意:軽度の毒性あり。ペットや小さなお子さまの手が届かない場所に。
サンスベリア(Dracaena trifasciata)

- 人気の理由:建築的なフォルム、低光量と水やり忘れに強い。VOC除去はわずかでもインテリア性が高い。
- ケアのコツ:低~明るい間接光、土が完全に乾いてから水やり、排水性の良い用土。詳しくは NC State Extension。
- ペット注意:軽い毒性あり。葉をかじるペットのいる家庭では高い位置に。
オリヅルラン(Chlorophytum comosum)

- 人気の理由:弧を描く葉と子株が可愛らしく、ビジュアルコンテンツにもぴったり。
- ケアのコツ:明るい間接光、表土が乾いたら水やり、定期的に鉢をすすいで塩分蓄積を防ぐ。詳細:Clemson Cooperative Extension。
- ペット注意:基本的に無毒。ペットがいる家庭にもおすすめ。
ポトス(Epipremnum aureum)

- 人気の理由:成長が早く、手入れに寛容。棚やアーチ、リビングウォールに映える。
- ケアのコツ:中~明るい間接光、表土が乾いたら水やり、モスポールやトレリスに誘引。詳しくは Penn State Extension。
- ペット注意:シュウ酸カルシウム結晶を含むため、ペットや幼児の手の届かない所へ。
ゴムの木(Ficus elastica)

- 人気の理由:艶やかで大きな葉が即座に高級感を演出。空気清浄よりも彫刻的な存在感が魅力。
- ケアのコツ:強いフィルタードライト、上部1–2 cmが乾いたら給水、葉のホコリはこまめに拭き取る。詳細:Clemson Cooperative Extension。
- ペット注意:乳白色の樹液が皮膚やペットを刺激する恐れあり。扱いは慎重に。
室内空気を整えるアクションプラン
物語性を行動に結びつけるステップです。
- 発生源を抑える:低VOCの塗料・家具・洗剤を選び、化学製品は居室外で保管する。(EPAガイド)
- 目的を持って換気する:外気が良好なタイミングで窓を開け、キッチンやバスルームの排気を活用し、気密住宅なら全熱交換換気を検討する。(EPA 2024アップデート)
- 残った汚染物質をフィルターに:HVACが対応できるならMERV-13へ更新し、部屋のサイズに合わせたHEPA空気清浄機を追加。(EPAガイド)
- モニタリングとメンテナンス:フィルターはスケジュール通り交換、湿度は30〜50 %に維持、季節ごとのメンテを記録。(EPAガイド)
- バイオフィリック・ウェルビーイングを強化:植物、自然素材、採光を組み合わせ、実証された心理的メリットを引き出す。(Texas A&Mの知見)
次のアクションは?
この事実ベースのストーリーを、NASA研究をそのまま信じている植物ファンやデザイナー、住宅所有者と共有しましょう。換気・フィルタリング・発生源コントロールを軸に会話をリードし、今回の5種類を「健康的な空間を完成させるバイオフィリックな仕上げ」として提案してください。「観葉植物は本当に空気を浄化するの?」という問いにも、科学的でインスピレーションを与える答えを返せるはずです。